薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

秘密の芋虫(2)

あるとき、ある団地の、部屋から部屋をうろついていると、ちいさな少女にわたしは見つかった。

ああ、カワイイ、と走りよってきて、彼女はわたしを鷲づかみにした。

わたしは、彼女の部屋にある、机の、ひきだしのなかにしばらく閉じ込められたのち、いまは、イチゴのパックで彼女が自作した、わたし用の部屋に、しっかりと入れられ、そこで生活させられている。

わたしはM・G・C。ミステリアス・グリーン・キャタピラーである。言うのがおそくなってしまったが、わたしのことをそう呼ぶ人もいるのだ。

そう、わたしはとてつもなくすばしっこい。捕まったのもわざとであるなら、逃げないのもわざとである。理由は特にない。わたしはM・G・C。ミステリアス・グリーン・キャタピラーなのである。

夜、彼女が寝てしまえば、モゾモゾとまた徘徊を始め、彼女のご両親の、夜の家庭生活などを黒目がちの目で興味深く観察し、彼女が目を覚ますまでに、彼女が作ったわたし用の部屋に戻るだけである。

何の問題もない。まあ、さほど、いまのところは不満はないのである。

まあ、しいて、不満を述べるとすれば、彼女は困ったことに、わたしのエサとして、油揚げなどを持って来るのだ。

彼女は、わたしの姿を見て、油揚げを食べるのだ、となぜか思ったようである。その前は豆腐を持って来たのだが、揚げたら食べるかもしれない、と思ったのだろうか。

油揚げに見向きもしないわたしを見て、彼女も少し考えたらしい、こども図書館に行って、昆虫図鑑を借りて来たのだ。

それ以来、わたしの部屋のなかには、彼女が外から取って来た葉っぱや、彼女が自分の食事からこっそり抜き取った野菜などが、みちている。

しかし、残念ながら、わたしの主食はお漬物なのである。特に好むのはきゅうりのぬか漬けなのである。しかし、おさない彼女を責めてはかわいそうというものである。

わたし、このミドリイロのわたしの生態を詳しくしる者は、わたししかいないのだから。いや、わたしもよくわたしのことは知らないのである。
 
2007.03.07 Wednesday
 
 
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