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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

おっぱいと男(上)

習作

町のはずれに、ひとりの男が住んでいました。

友だちもおらず、恋人もいない。

男はひとりぼっちのさびしい男でした。

 

休みの日、男が買い物をしにひとりでショッピングセンターに行くと、そこにはたくさんの人たちがいました。

家族で来た人や夫婦で来た人、友だちどうしや恋人どうし、誰かと一緒にやって来た人たちが、みんな仲良く買い物を楽しんでいました。

 

ひとり、休憩用のベンチに腰かけた男の前を、みんなが次々と通り過ぎて行きます。

誰も男の方を見ようとはしませんでした。

誰も男と目を合わせようとはしませんでした。

誰も男のことに注意をはらう人などいません。

みんなが、男の前を通り過ぎて行きます。

 

男は、窓から外を眺めました。

窓からは、大きな公園が見えました。

そこでは野球をしている人たちがいて、みんなとても楽しそうです。

 

しばらくじっと、みんなが野球をしている様子を眺めて、男がまた前を向くと、男のとなりにおっぱいが腰掛けていました。

 

男はそっと立ち上がり、すぐにショッピングセンターを出ました。

公園の前を、はやあしで進みました。

そしてもう大丈夫だろうと思って振り返ると、すぐうしろにおっぱいがいました。

おっぱいは男のあとをずっとついて来ていたのです。

 

男が立ち止まると、おっぱいも立ち止まりました。

男が歩き出そうとすると、おっぱいも歩きだそうとします。

男がうしろを振り返って見ると、おっぱいも自分のうしろを振り返って見ました。

そして前に向き直り、おっぱいは男のことをなんだかじっと見つめてきます。

 

おっぱいがなにを考えているのか、わかりません。

なんであとについてくるんだ、ときいても、おっぱいは黙っています。

男は知らないふりをして行くことにしました。

すると突然、おっぱいはぴゅぴゅぴゅとその場で乳を出しはじめました。

男は驚いて、どうしていいかわからなくなり、思わずおっぱいを抱きかかえてしまいました。

 

抱きかかえると、おっぱいは乳を出すのをやめ、すぐに静かになりました。

男が歩き出すと、ふるふると揺れて、腕に触れてきます。

なんだかおっぱいは、こうして欲しかったようです。

 

おっぱいを抱えたまま、どこに行っていいのかもわからず、男はあてもなく町を歩きました。

男の腕の中で、おっぱいはただじっとしていて、男が歩くたびにふるふると揺れています。

おっぱいはとてもくつろいだ様子で、いい気持ちになって、眠ってしまっているようでした。

 

男はだんだんと腹が立ってきて、なんだかとても不公平な感じがしました。

しかし男のことなどおかまいなしに、おっぱいはどんどんと男の方に寄りかかってきて、いびきまでかきはじめました。

頭にきた男は、前に進んでいると川があったので、橋の上からおっぱいを投げ捨てました。

 

はっ、とおっぱいは驚いた顔をしました。

川に落ちたおっぱいは、そのままどんぶらこーどんぶらこーと川を流されていきました。