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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

秋葉原にいるひと

日記

人と会う約束があって秋葉原に行った。
秋葉原は夜の6時だった。
6時だけどもう夜だった。
季節は冬なのだった。

ヨドバシカメラで待ち合わせだったのだが、待ち合わせの時間よりも早く着いたので、一階のフロアーを見るともなく見て回ることにした。携帯電話の売り場や、パソコンの売り場が、一階にはあるようだった。

それにしてもアキバのヨドバシカメラにはいろんな人がいる。

ある種予想通りの、そんな服どこで買ったんだよ、何でそんな組み合わせで着てるんだよ、というような、絵に描いたようなオタクの人たちもいれば、一見今風な服を着ているが、靴だけが、うわぁそれどこで買ったんだぁ、という感じのものを履いている、かくれそこねたオタク、という感じの人もいる。

どこのオダギリジョーだよ、という感じの、ちょっとアキバらしくない人もいて、何でここに居るのかわからない感じもしたが、でもその人がじっと見つめている商品を見てみると、本物のオダギリジョーや、別の街にいるオダギリジョーなら、おそらく熱心には見つめたりはしないようなものなのだった。

そういう日本の人たちがいるかと思えば、本当にその格好で自分の国から来たのか、という、この季節にジーンズとパーカを着ただけで、それにナップサックを背負っただけの身軽な格好でいる白人の女の子二人組みが、携帯電話を手にとって英語で何か話しをしているし、観光でやってきたらしい中国人の家族が、電化製品のフロアーに行こうとしてるのか、エレベータの方に急ぎ足で向かっていて、インド人らしき人も、ちらほらと見かけたり、いろんな国の人たちがいる。

そしてその、いろんな国の、いろんな人間が交じり合って商品みているのが当たり前の風景で、それぞれがお互いに対して無関心な感じなのが、あまり他にはないSFの未来都市みたいでもあって、さらに全体的にはやはり東京の東側の、どこかイケていない猥雑な感じの空気が漂っているのが、外に出れば最新の高層ビルも建っているのが見えるのに、どこかちょっと独特な場所で、不思議と気軽な気持ちになれるような気がする。


別に自分は犯罪者でも逃亡者でもないが、勝手に潜めるような感じがして、わたしも他の町よりは、人に秋葉原で会いましょう、と言われるのが、いちばん気が楽だったりもするのだった。

パソコン売り場で、パナソニックのノートを熱心に見つめていたらしいオタクの人に、店員がよろしかったらなどと話しかけていて、そのオタクの人は訊かれてもいないのに、

「僕のレッツノートをそろそろ買い換えてもいいころなんじゃないかな、なんて思っていまして、ははははははは。でも今のは軽いですね、ありえないくらい軽い、ホント軽いな、ホント軽いよ、どうなってんのこれ」

と、そのオタクらしい人はレッツノートをひょこひょこ持ち上げながら言っていた。その様子が、レッツノートの横に置いてある、メーカのポップの写真に写っている、何でも肩肘張らずに出来て、自然で素敵なわたし、って感じの女性モデルの様子と、悪いけどあまりに不釣合いだった。

 

そのオタクの人の浮いている感じが、たとえば勝手に人間のカーストの最上位にいると勘違いしている、女子高生のグループみたいな、お前何様なんだよ、というような感じの女だと、女様だと、すぐにキモいとかいいそうな感じだったのだけれど、何かここだと許されるような、空気もへんにならないような感じがあって、べつにそうですけど何か?という感じがあって、周りにいた客も店員も別にその様子に平然としている。あえて平然とした感じを装っているところもどこにもなくて、何かそれがいいな、ここはキモさへのストライクゾーンが広い、と思った。

 

逆に、女様が大好きな、人のキモさへのストライクゾーンが狭い狭い、全力でわたしはキモくないっていってるのがキモい町なんか全部燃えて無くなればいいのに、と思った。人のいろんなあり方が、ここだとかなり許されるなみたいな(かといって突然床にうんことかしたりまでは許されないが)、そんな感じがして、秋葉原はやっぱりいいな、と思った。きっと秋葉原の夜の空は、ネオンに照らされ、テレビの空きチャンネルの色なのだった。

 

2012.01.22 Sunday

 

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