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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

発売から一年半

薫はちっさい男なので、ネットで見ることの出来る書店の在庫は、いつも常に確認している。一日に何度も確認している。
今日は一冊売れた。ああ、最近全然売れてないと、殆どノイローゼに近い状態で確認している。
売れた冊数まで正の字を書いて数えているぐらいなのだ。
とってもちっさい男なのだ。
ちっさい男、と思われても、泡沫作家(まだ作家といえるほどの立場ではないが)にとって、何冊売れたか、というのがいちばん大事で、殆どそれで判断されるといってもいい。もちろん、いい本でも売れないことはあるのかも知れないが、この出版不況の時代に、売れてないけどいい本なんですよ、なんて言っている余裕は誰にもない。つまり売れなければ明日はないのである。

わたしのはじめての本である、『どうしてボクには仕事がないんだろう』が発売された日に、書店へどうぞよろしくお願いいたします、と営業しに行ったら、15冊配本されていた吉祥寺にある書店では、その15冊のわたしの本が、他の新刊本の台にされていた。雨宮処凛湯浅誠の本の台にされていた。吉祥寺の誰の目にもつかないまま、わたしの本は返品されるのだ。

それでも、名刺を持ってカウンターに挨拶に行ったら、取り次いだアルバイトらしき店員は、奥にいる正社員に名刺を持っていったが、その書店員はこちらを見もしないで、手でシッシとやって、追い返せ、と言ったようだった。

戻ってきたアルバイト店員は、いま忙しいと申していまして、とわたしに言った。なんだか顔が半笑いで、カウンターにいた、他に二人いたアルバイトらしき店員に、フリーター薫だってよ、って感じで名刺を見せて、ぷっ、という感じで三人とも吹きだして、その後、どうします、名刺をお返ししましょうか、と言った。

見たこともない男が、フリーター薫みたいなふざけた名前を名乗って、そう書いた名刺まで作って、持ってきて、どうせろくでもない本か、読むに耐えない自費出版のポエムに違いないものを、それをよろしくお願いしますだなんて、なに営業に来ているの、と思うに違いない。

自分でも、なぜこんなことになっているのかわからない。

別の書店にPOPを持っていくと、何で1冊ぐらいしか売れない本を、5冊売れるようにするために、わざわざお前のためにPOPを置かなければならないんだ、と言われてしまった。そのPOPのせいで、50冊売れる本が、10冊しか売れなくなったらどうするんだ、と言われてしまったが、相手の立場からしたらそれは正しいのだ。

 

ただ、いろいろわかってはいるが、なんで自分はこんな名前で本を売らなくてはならないのだろう、わざわざこんな扱いを受けるために世に出たのだろう、とも思ってしまう。


そんな、「フリーター薫」だなんていかもの臭い名前の、無名の新人の本を、発売されて一年半も経っているのになぜかいまだに置いてくれている本屋さんもあって、本当にありがたい。更にそういう本屋さんの中には、売れたらまた仕入れてくれている本屋さんも稀にあって嬉しいのだが、わたしはいったいどうなってしまうのだろう。

今日、ある本屋の在庫が、一週間ぐらい前に在庫切れになったのに、また在庫が一冊ありになっているのに気づいて、いいおやじが小躍りして喜び、柱の隅に足の小指をぶつけ、まるで虫のようにみっともなく悶えまくったあと、この日記を書いている。

 

2010.12.05 Sunday

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