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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

東京日記(22)

東京日記

仕事の打ち合わせで担当編集者に会いに行くため総武線に乗り、飯田橋で降りた。

何だか長い、飯田橋駅のホームを歩いていると、これから出版社のロビーで会う編集者の顔が頭に浮かんだ。打ち合わせのとき、今度は何と言われるだろうかと思った。

階段でホームから下り、改札を抜け、地下鉄東西線に乗り換えるため、連絡通路を進んでいると、向かいから小学生が歩いてきた。
何だか楽しげな感じで歩いてくるな、と思ったら、

おばけなんて ないさ
おばけなんて うそさ
ねぼけたひとが
みまちがえたのさ

と小学生は歌っていた。

確か、『おばけなんてないさ』という歌だっただろうか。
自分も子供のころ習って知っている歌を、いまの子供も歌っているんだ、と思ったら、嬉しくなった。

しかし、おじさんもその歌を知っているよ、と嬉しげに話し掛けたら、変質者として捕らえられる可能性もあるので、『おばけなんてないさ』の歌を歌いながら横を通り過ぎていく子供を、わたしは黙って見送った。

だが、頭の中では一緒に歌っていた。

だけどちょっと だけどちょっと
ぼくだって こわいな
おばけなんて ないさ
おばけなんて うそさ

と密かに一緒に歌っていた。

小学生は結構大きな声で歌っていたから、わたしの他にも実は頭の中で一緒に歌っていた人がいたかも知れない。連絡通路には多くの人が行き交っていた。
それとも、東京で働いているような大人は、そんなことはしないだろうか。

小学生とすれ違った後も、わたしは東西線のホームで地下鉄を待つ間、『おばけなんてないさ』の二番や三番の歌詞をずっと歌っていた。

列車がやって来て乗り込んだ後、童謡は凄いな、としみじみ思った。
『ぞうさん』の歌詞は、

ぞうさん ぞうさん
おはながながいのね 
そうよ かあさんもながいのよ

 

なのだ。
どうしてこんな歌ができたのだろう。


わたしは同じ車内にいる人々を、見るともなく見た。
また、『おばけなんてないさ』を頭の中で歌いだした。

まさか、わたしが『おばけなんてないさ』を歌っているとは気付きもせず、同じ車内にいる人々は、電車の揺れに身をまかせていた。

 

2010.04.26 Monday

 

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