薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

神様(3)

不安が去らないし、相談する人もいないので、ネットで調べてみた。すると、カラスが二羽で行動している場合は、ほぼつがいで、しかも今は子作りの時期であるらしく、子作りの為に巣を作成し、都会のカラスはその巣の材料として、ハンガーやヒモなどを利用するらしい。

なんと、カラスはわたしのハンガーや洗濯バサミを使って、愛の巣をつくり、子作りに励むつもりなのだ。子作りの前段階で躓いているわたしから物を盗み、こんな中年になっても愛の巣をつくることのできないわたしから物を盗み、子宝に恵まれるための準備を行っていたのだ。

しかし、わたしからハンガーや洗濯バサミを盗んで行った理由はわかったが、なぜわたしからなのだろう。他にもいっぱい家はあり、その家々のベランダには、もれなくハンガーも洗濯バサミもあるというのに、カラスは皮肉や当て付けまでできるほど、知能が発達した生き物なのだろうか。だとすると、カラスにはわたしが女にモテないと丸分かり(あの人間のオス、メスに見向きもされないよ、ホントだね)ということになるので、いくらなんでもそれはありえないのじゃないか、という気がさすがにしてきた。

じゃあなぜだろうと考えていたら、そういえば昨年の今頃にもそんなことがあったような気がして、思い出した。昨年もわたしが住むアパートの部屋にハトが訪ねて来、次の日にはつがいでやってくるようになり、調べたところわたしの住むアパートの上の階に巣があって、そこでいちゃいちゃすればいいものを、わざわざわたしの家のベランダにやって来、いちゃいちゃし、追い払っても追い払ってもやって来る。仕舞いにはなぜか木の実とか棒切れなどの、お供えもの的な何かを置いていく、という不思議行動までとり始めたが、ある日を境にまったくやってこなくなった。

なぜ鳥たちは子作りの時期になると、わたしと接触を持とうとしてくるのだろう。わたしはひとつの結論に達した。どうやらわたしは、鳥から見ると、何かご利益をもたらしてくれそうな何かに見えるということらしい。鳥の神様的ななにかということ。しかも子作りの時期に決まって鳥達がコンタクトを取ってくることから考えて、鳥の子宝の神様的な何か、ということのようである。

そんなことは知らなかった。いったいいつから、わたしは鳥の神様だったのだろう。生まれた時からか、ある時からか、わたしには分からないが、自分が気づいてないだけで、わたしは鳥の神様だったということなのか。しかも子宝の神様とは、まるで童貞が名産婦人科医、行列のできる触診というような、わけのわからないことになっている。

鳥達はわたしを見かけると、あっ神様だ、子宝の神様だ、などと内心思いながら、素知らぬ顔をして地面をほじくり返したり、電線の上に止まったりしていたのだ。 表向きはチュンチュンとかホロッホーとかカアカアとか鳴く振りをしながら、わたしが本屋でエロ本を立ち読みしていたり、買い食いしたりしているところを、盗み見ていたのだ。

鳥達の間では、広島にいらっしゃったはずの鳥の神様が、東東京にお住まいになられはじめた、と既に知れ渡っているのかもしれない。そういえばわたしの越して来た町には妙に神社が多い。わたしも呼ばれたのかもしれない。

それで、多くの鳥達は人間が出来ていて、(厳密には鳥が出来ていると言った方がいい)鳥の子宝の神様のプライベートを尊重しているのだが、一部の不届き者が、自分だけは厚くご利益がありますように、とわたしの物を盗んだり、近寄って来たりするのかもしれない。

しかしどうしよう。いつまでもほっといてくれるだろうか。わたしの物干し竿に、勝手にしめ縄をしようとしたり、わたしの家の外壁に、ハケを咥えた無数の鳥が飛んできて、勝手にニスを塗り始めたら。関東にはいったい何羽の鳥がいるのであろう。全部が薫参りと称して飛んできたら、大変なことになってしまう。わたしはもう外に飛んでいる鳥が何か別のものに見える。この悩みを誰に相談したらいいのだろう。

 

2007.05.09 Wednesday

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