薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

神様(2)

わたしは人類でカラスは鳥類であるので、残念ながらわたしの洗濯道具だけ持ち帰った理由を、カラスに問いただすことができない。カラスとはコミュニケーションが取れないのだ。

そう考えるとわたしはちょっと恐ろしくなってきた。わたしが家を出て行ったときを見計らって、ひとのものを盗みに入り、わたしのことを最近じろじろ見ていたあの二羽がやったのだとしたら、手分けをして共同作業までするほどの知恵があるのだ。

町に住む鳥などは、ハトにしろスズメにしろ、ちょっと見るからにアホそうで、人間であるわたしなどの敵ではない。公園とか電線とかにいても、だから気にもとめずお前らなどは眼中にないよ、という態度をとっていたのだが、カラスはなんて頭がいいのだろう。

鳥だなんてなめた態度をとっていたらやられてしまう、というような気がした。しかもあんな鋭いくちばしや爪を持っていて、糞によって空から爆撃までできるのだ。犬や猫もなかなか知恵があるし、牙や爪を持っていて侮れないが、犬や猫たちは、人間のペットというところに自ら好んでおさまっているようなところもあるので、共存していけそうなところがあるが、カラスがペットだというのはあまり聞かない。

そのうえあの頭のかしこさで、自由に空まで飛んでいるのだ。もしかしたら幼稚園児ぐらいの知能はあるかもしれない。しかも幼稚園児以上に聞き分けがなく、空を飛ぶことができる。

さらに一番おそろしいことは、そのカラスが、誰あろうわたしに目をつけているということだ。カラスから見れば人間などどれもこれも同じに見えるのではないかと思っていたが、そうではなく、見分けがつくうえに、最近の態度から考えると、わたしにつきまとっているのだ。

こわい。どうしたらいいのか不安になった。引っ越してきたばかりで頼る人もおらず、カラスに付きまとわれているんです、と警察に相談してみようかと思ったが、病院に行くことを遠回しに薦められるかもしれない。都庁に訴えてみようか。カラスに狙われているということを、どうやって説明すれば、頭の調子がおかしくなった人、と思われずに納得してもらえるだろう。

そんなことに思い悩んでいたら、また窓の向こうで物干し竿が揺れる音がした。見ると窓に黒い影が映っている。あの影の形はカラスに間違いない。こわい。

もう盗るものは何もないから、そっとしておいたらどこかに行ってくれるだろうか、と思ったが、なかなか立ち去らない。窓を強く突いて音を出し、追い払おうとしたが、それでも立ち去らない。ここの窓が磨りガラスなのがいけないのだろうか。そのままにしておくわけにもいかず、勇気を出して顔をガードしながら窓を開けたら、前を横切るように飛び去っていった。

見ると、網戸をほじくり返そうとした跡がある。網戸をばらして細い糸にして、持って帰ろうとしたようであった。いったい何をするつもりなのだ。他の家の網戸でもいいじゃないか。なぜわたしを。わたしが出てくると逃げるので、直接危害は加えられそうにないが、どうしてわたしなのか分からないので、不安が去らない。相談できるところもない。

 

2007.05.08 Tuesday

 

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