薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

上京日記(50)

五月二十八日

また夢の中に謎の白人女性ベッキーがあらわれた。家を出たわたしを、一定の距離を保ったままつけてくる。電信柱の影に隠れたり、後はつけていない振りをしながらも、手に持っている瓶を、なぜかちらちら目に付くように見せてくる。はじめは無視していたが、あまりにもちらちらさせるので見ると、マーマレードの瓶だった。この前のピーナッツバターとは違い、今度はわたしにマーマレードを塗るつもりなのだろうか。

総武線に乗り、飯田橋までいく車内でも、東西線に乗り換え、九段下までいく車内でも、ぎりぎり視界に入る場所にいて、自分の存在をわたしに意識させている。ふりふりの衣装を着ている。わたしはずっと見てない振りをしていたが、意を決して顔を睨みつけたら、声には出さず口だけ動かして、アイプレイテニスと伝えてきた。アイドントプレイテニス、と言い返してやろうと思ったが、そうすると向こうの思う通りになってしまう。

九段下に着いた時、電車の扉が閉まる寸前にわたしはホームに駆け下りた。ベッキーはしまった、という顔をした。九段下駅にわたしが降り立ったと同時に、列車の扉が閉まった。ホームを見渡した。ベッキーは降りていない。ベッキーを乗せた列車が、急激に速度を上げながらホームに立つわたしの前をどんどんと通り過ぎて行った。

 

2007.05.28 Monday

 

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