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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

上京日記(28)

上京日記 下流の話

四月二十六日

仕事が入ったのに風邪をひいてしまった。

ただの風邪だと思っていたらからだが弱っていたのか熱が出て、寝込んでしまった。

そんな状態でも早く治すためには何か食べなければならないから、這うようにしてコンビニに向かった。スーパーの方が安上がりだが、自分で作る元気が無い。ただでさえお金が心許ないのに、コンビニだと出費がかさんでしまうのに、と思った。

夜でも寒くなくなってきている。そんななか、熱いからだを抱えて、ふらふらと歩いている。からだの節々がじんわりと痛い。何でこんな日に日に暖かくなる季節に風邪をひいてるのだろう、せっかく東京に来て初めて仕事が入ったというのに、なんで熱なんか出してるんだろう、と思ったら情けなくなってきた。

自分はいつもこんなだった。いざという時に必ずミスをする。入試の時には必ずうんこを漏らしてすべり、クラブの試合は必ずわたしのミスで負ける。

そうしないようにしよう、そうならないようにしよう、と思えば思うほどとらわれてしまうのか、何かに目には見えない大きなものにからかわれているのか、どう工夫しても必ず最後にはそうなってしまう。

常に、あそこであいつが、と言われ、使えない奴だと言われてきた。
入試では、試験の度にうんこを漏らし、すべり止めにしか通らなかった。

社会に出たら、どの仕事も人並みには出来ず、電話オペレーターの仕事についたときは、必ず苦情の電話がわたしのところに掛かってきて、数百人いる職場の中でも、ダントツの引きの強さから、チャンピオンと言われていた。処理した件数で評価されるのに、いろんな部署でたらい回しにあった電話が、わたしのところに掛かってくる。周りの皆が、まただ、またあいつだ、と笑いながら目で合図し合っているのがわかる。

皆から見くびられ、見下されて毎日を過ごしていくのはつらい。社会に出てからは、何かひとつだけでいいから、人から認められるものを身に付けたい、と探し求めていた。別に偉そうにしたいわけでも、一番にも、唯一にも、成りたいわけではない。

やっぱり、期待に応えてくれる、これなら任せられる、と他人から思われる存在になりたかった。

いろんな仕事についたり、いろんな事を試しては失敗し、やっとひとつ、何とか認めてもらえるものが出来てきたのかな、と思い、ひとりで東京に出てきた。そして初めて仕事が入った矢先、風邪をひいてからだが思うようにならない。いままでの経験から、ついてなかったり、そういう目にあう自分を、もうネタとして仕事にできる職業についたつもりだが、また、同じ失敗を繰り返すのだろうか、と不安になる。自分を認めてくれる人には応えたいというのに。東京の片隅にある生ゴミ臭い部屋で、自分もひとつの生ゴミになっていくのではないだろうかと。

 

2007.04.26 Thursday

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