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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

上京日記(21)

四月十九日

クレジット会社から手紙が届いているのに気づく。

はて、なんだろう、と思ったが、そういえば、銀行で口座を開設したときに、ATMを利用するキャッシュカードを、その銀行系のクレジットカードも兼ねるようにさせてくれないか、と言われたのを思い出した。

わたしは自分では駆け出しの物書きのつもりではあるが、知らない人から見れば、おそらく無職の男であるし、もし犯罪などを犯してしまったとしたら、自称フリーライターの薫容疑者、とニュースなどでは報道されるのではないか、という気がする。

会社員とか、公務員とかいうものは、面接や試験を通って、そこに勤めれば、正真正銘、会社員や公務員であるのだが、物書きとかのフリーの仕事は、どうもそのあたりが曖昧である。

でも、やっぱりわたしは世間から見れば、無職で間違いない、という気がする。

だからわたしは、クレッジットカード化を勧められたとき、わたしはまだまだ収入が少なく、それを仕事と言えるほどの稼ぎが無いので、審査には通らないだろうから、と遠回しに断ったのだった。しかし窓口の、おそらくは新人の女性行員は、わたしの母は専業主婦ですけど、審査に通りましたから、大丈夫です、としきりに勧めてきたのだった。

あなたのお母さんは、新卒で大手一流銀行に就職できるぐらいのあなたが、通っていたであろう一流の大学を卒業するまで、小さな頃からずっとあなたの学費を払いつづけることのできた程のお父さんの、奥さんであるんですよ。働かないでも暮らせてた人ですよ。専業主婦と言ったって、いろいろだと思うんですよ、とわたしは思ったが、もちろんそんなことは口には出さなかった。

どうも一生懸命に勧めてくる。おそらくノルマがあって、何件会員に加入させたかで評価され、上司も数字を達成しろ、とうるさいのだろうな、とわたしはその新人らしき女性行員と向かい合いながら思った。損するわけじゃないし、じゃあ入ってみようか、とそのときは思ったのだ。

手紙は、その入会申し込みをしたクレジット会社からのもののようである。

 

カードが郵送されてくると言っていたから、それかな、と思ったが、カードが入っているにしては、何だか軽い。なかを開けると、一枚紙が入っていた。

あなた様から、入会のお申し込みがありましたが、我が会は、あなた様を入会させないことに決めましたので、何卒宜しくお願い致します。どうして断られるかは、まあ分かりますよね。だからあなたもこんなこと言われても、わたし達を許さないといけないですよね。というような内容が、ひどく丁寧で遠回しな文面で書かれてあった。

それはそうだよな、とも思うのだが、何だか誘われて行ったらムチで打たれたような、わりきれない気持ちがほんの少しした。

 

2007.04.19 Thursday

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