薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

上京日記(5)

四月五日(その一)

ニトリに行く。とても広くて驚く。巨大なベージュ色の倉庫といったおもむき。大きな棚が並び、家庭用品がとめどなく陳列されている。そこを、大きなカートを押して、気に入ったものをどんどん入れていくという仕組み。
すべての商品が驚くほど安い。他の店の大体三分の一か四分の一の値段だ。なぜこんなに安いのであろう。中国や東南アジアの人をニトリは不当に搾取している のか、と疑いたくなるほどである。それほど安い。それとも他の店がぼっているのか。商品に、洗練されているとか、いい素材であるとか、そういう付加価値を 付けねば、大量生産品はここまで安くなるのか、と軽いショックを受けた。
店内には、若いカップルや、新婚さんか、と思われるような男女が多かった。おやじは孤独に、ひとりカートを押して、店内をうろついた。孤独なショッピング。

買い物中、ある女性とぶつかりそうになって、あっ、すみません、とお互いに言ったが、それが、その日はじめて口を利いた時だった。午後五時のこと。
女性に、声に出されて、あっ、すみません、と言われるのは、何だか嬉しい。あっ、すみません、という女性の声が、長く耳に残った。
そのぶつかりそうになった女性は美人で、声もよかった。うっとりした。
こういうのをきっかけとして、更にその女性に対して妄想をたちまち膨らませ、もうここで別れたら二度と会えない、と思い、後をつけ、家も憶え、などなどしていくと、ストーカーになるのか、などとふと、思った。どうやらその種の気がわたしにはあるようである。その女性の後はつけていない。人生が三度ぐらい あったらつけたかもしれぬ。

 

2007.04.05 Thursday

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