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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

広島日記

久々に外にでる。
数ヶ月ぶりに町の中心部、繁華街にでる。
街には、若い女子がたくさん行き交っており、とてもおっぱいやおしりのかたちがいい。
きれいに化粧をし、おしゃれな服を着ている。
女の子ふたりで、楽しそうに話しながら、どこに行くのか、かるい足取りで、わたしの直ぐまえを進んでゆく。
思いっきり鼻を膨らまし嗅ぐと、とてもいい匂いがしそうで、どこまでもついて行きそうになる。
人間に生まれるのなら、せめて一年ぐらい、若い女子になりたかった。不公平だ、と思った。
わたしもかわいい女子になりたい。中年から女子に脱皮して、うふふ、と笑いながら街を闊歩したい。
僕もいれて、いれて仲間に、と言い出しそうになった。

だが、そういえばわたしは本屋に行くのだった、と、ふと思い出し、ついて行くのを諦め、地下への入り口から階段を下り、地下街に入った。
地下都市好きの自分を、地下の街並みで、しばし癒す。
地下街を、少し速い足取りで、見知らぬ人達とすれ違いながら、歩いた。

出来て数年の、この街ではあたらしい場所。
平日の午後であるが、素敵な格好をした人々で、賑わっている店があった。シャッターの閉まっている店も、いくつかあった。カフェでお茶を飲んでいる人々を横目で見ながら、地下街を出て、本屋のあるショッピングセンターに入った。
この街では一二を争う売り場面積の大書店。たくさん並んでいる本を見ているだけで、楽しくなってくる。心ゆくまで立ち読みをした。

再び地下街を通って、家路につくため、入り口の階段を下りていると、前に若いカップルがいた。
中学三年か、高校一年か。オシャレな若者らしい格好をしている。
ふたりとも、いい色落ち加減のデニムを穿き、彼氏の方は少し大き目を着くずすような感じで、彼女の方は、からだのシルエットが浮かびあがるような細い、股 上の浅いものを穿いているが、年ゆえか、尻がまだ扁平であるので、女であるからだを、見せつけているというようなふうではなく、なんだかすごくいい感じで あった。

いま流行の、おしゃれとされる格好なのだろうが、ふたりとも、その格好がまだちょっと馴染んでいない。
格好と同じように、ある特定の異性と一対一で、街を一緒に出歩くのも、まだなんだか慣れていない様子である。
初デートですねおふたりさん。その空気を分けてください、僕に分けて、と思わず言いそうになる。
勝手なオヤジの妄想であるが、どうやらちっすは、まだのようである。口を吸い合ったことはまだないようである。
早くしないと、おじさんのようになるよ、と勝手なことを思う。

しかし、もう夕暮れである。これからデートだとすると、何をしに行くのだ。お食事か、夕飯か、その後は何をするのだ。うぶそうで、微笑ましくさえ見えるというのに。勝手に、お父さんやお母さんの気分になる。
まさか、こんなうぶそうなふたりがもうあんなことやこんなことまで、ふたりで動物のような声を上げあった次の朝に、同じクラスで答えのわかりきった方程式などを暗記せねばならないのか。
そりゃあバカらしくて授業なんかマジメに受ける気にはならん。そりゃあ履修不足も、学校崩壊も起こるはずだ、との思いを強くした。と同時に、そんな日常を過ごせる十代をとても羨ましく思った。

階段を下りるリズムがからだを揺さぶっていたのも影響したのか、いろんな感情が混ざり合って、もうわけもわからず、かんちょうと大声でいいながら、指でズ ビシと彼女の扁平な尻をいきなり後ろから突いてやりたい衝動にとらわれた。そんなコミュニケーションを取りたい気がした。

だが、そんなことをすると、彼氏の方に、いいおやじなのに、街のど真ん中の大勢の前で、殴られそうだし、警察官にもみっともなく取り押さえられて、地面に顔などを擦り付けられそうである。

わたしの思想哲学とコミュニケーション願望は、誰にも理解されそうにない。

こらえなければならないが、やったらどうなるだろう、本当にやったらどうなるだろう、という声が、頭に響きつづけてしょうがなく、実行に移してはいけないので、衝動を誘いまくるカップルから、離れた。

気を落ち着けるために、ゆっくりと歩いていると、ズボンのポケットに入れた携帯が震えはじめた。咄嗟の振動に、一瞬腰がビクンとなってしまった。
携帯を取り出し電話の向こうに呼びかける。
目にうつる、前の景色が、自分だけが後ろに下がっていったような感覚になりながら、フィルターを透してみているような風景に変わる。
携帯から聴こえる声が、いま何してたの、と言った。街をふらついていたよ、とわたしは答えた。

 

2007.02.02 Friday

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