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薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

温泉(1)

あまりに痩せないので、温泉に行った。ダイエットと温泉はあまり関係ないと思うのだが、血の流れが悪いから肥りやすいのだ、まずは血行をよくし、老廃物を取り除くこと、などと、いっけんもっともらしいことを言われ、田舎に帰ったおり、母親に温泉センターに連れて行かれた。自分が行きたかっただけではないのか。

施設に到着すると、ロビーで、浴衣とタオルとロッカーのカギを渡された。温泉どころか、銭湯にさえ、ここ十五年ばかりは入っていない。暖簾をくぐって入った脱衣所には、わたしの他には誰もいないようだが、曇ったガラス扉の向こう、浴場には、人のいる気配がある。何人か既に入っているようである。


指定されたロッカーを開け、ズボンとパンツを脱いだ。見慣れた自分の下半身のはずだが、なんだか奇妙なもののように見える。なぜだろう。

自分の下半身を見つめていたら、ロッカーの陰から浴衣姿のおやじが現れた。なぜか思わず内股になって、とっさに手で下半身をかばってしまった。おやじは少し警戒した様子で、わたしの背後をすり抜けていった。

フリースとTシャツも脱いで、真っ裸になった。先ほどロビーで渡された、オレンジ色のタオルで股をかくしながら、浴場入口の、ガラス扉に向かって、わたしは脱衣所を歩んだ。

脱衣所を裸で歩くのは、何もおかしくないわけだが、どこか不自然な気がするのはなぜだろう。裸足の感触がぺたぺたする。扉に近づくにつれ、床がぬめぬめしてきた。ガラス製の扉は湯気で曇っていて、なかがよく見えない。モザイクがかかっているように見える。はだいろが、なかで何だか動いている。こもった音がなかから聞こえてくる。わたしは、そっと、扉に手をかけた。

 

2007.02.16 Friday

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