薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

マウス

わたしの使うパソコンのマウスが、いつのまにか黄ばんでいた。
白いマイクロソフトのである。
かいでみると、ちょっと変な臭いがする。
夏場のデブのような臭いがする。
もう一度かいでみた。
やはり、一汗かいた夏場のデブのような臭いがする。
なぜだろう。
何だか嫌なので、洗剤を吹きかけ、マウスを拭いてみた。
だが、黄ばみがとれない。
強く拭いてみても、黄ばみがとれない。
じっとマウスを見つめた。
黄ばんだマウスというのは、どこか不潔たらしい。
もう一度、親の敵のように、何度もしつこく拭いてみた。
黄ばみは、落ちないどころか、逆に艶さえでたようである。
全体的に黄ばんでいれば、元々そういう色だ、と思い込むことも出来る。
だが、まだらに黄ばんでいるので、見れば見るほど汚らしい。
捨てたくなった。
しかし、マウスとしては問題なく使えている。
黄ばんでいるだけで捨ててしまっては、罰があたりそうであるし、それに、新しいマウスを買い換えるほどの金銭的余裕さえ、今のわたしにはない。
そうはいっても、汚らしくまだらに黄ばんでいるのが、やはり気になる。
気づくまで何とも思っていなかったのに、一度気になりだすと、それを無視することができない。
またあらためて臭いをかいでみた。
少し、臭くは無くなった。
頬を寄せ合うぐらいにひっついていたデブが、一歩後ろに下がったぐらいにはなった。
しかし何だか、今度は手がほんのり臭いことに気づいた。
手に、汗ばんだデブの臭いが。
鼻を鳴らしてよくかぐと、やはり手から、いつのまにかデブのような臭いがしはじめている。
すぐさま洗面所に行って、手をよく洗い、もう一度手をかいでみたら、臭くなくなった。石鹸のいい香りがする。
安心して、またパソコンの前まで戻ってきた。
しかし、マウスはまだらに黄ばんだままである。
もう一度、マウスには触らぬようにして、そっと鼻だけを近づけてかいでみた。
なぜか、また臭さが元に戻っている。
一歩後ろに下がっていたはずのデブが、手を洗っている隙に追いかけてきて、跳びついて来たかのような臭いがする。
頭にきて、もう一度洗剤を吹きかけ強く拭いてみたが、デブは、わたしのマウスから去ろうとしない。
触ったのでまた手が臭くなった。

それからいろいろ試してみたが、どうやっても、黄ばみとデブの臭いがとれなかった。
そしていつのまにか、その臭いをかぐのがくせになり、三十分おきぐらいにかいでいる自分がいる。
マウスにそっと鼻を近づけ、臭いをかぎ、臭がっているわたしがいる。
もしかすると、マウスの中にひとりの小さなデブが住みついていて、夜中、わたしが寝静まった頃合を見計らい、外に出てきて自分の体をわたしのマウスに擦り付けているのではないか、と思い、夜中、いきなり明かりをつけてみたが、小さなデブを捕らえることはできなかった。

 

2007.02.05 Monday

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