薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

ハト

あのハトの、独特で間抜けな羽音が、ベランダですると思い、閉めきったカーテンを少しあけて外を覗くと、ハトがわが家のベランダに不法侵入している。
ハトとわたしは目が合った。
家の持ち主と目が合ったというのに、ハトはわたしのことを無視したばかりか、それからしばらくじっと見つめ続けているというのに、非常にくつろいだ様子で、いっこうに立ち去る気配がない。
不法侵入であるばかりか、不法滞在である。
鋭い眼つきで睨みつけてみるが、首を左右に動かすばかりで、まるでわたしなど存在してはいないかのような態度である。
ハトの分際で。
人にはよく無視されて、もう慣れてしまったわたしでも、ハトにさえ無視されたとなると、自尊心のため、わたし自身の存在証明のため、だまって見ているわけにはいかない。
僕が僕であるために、ハトを虐待せねばならない。
わたしは窓ガラスを叩いてみた。ハトは少し飛びはねた。だが、わたしのベランダからは立ち去ろうとしない。ほとんど同じ場所に、またとまり直しただけである。
こら、ハトー、と叫びそうになったが、ほぼ同時に、ハトが人の言葉をわかるはずもないと思い、わたしは何も口に出せなくなってしまった、が、次の瞬間、感情の持って行き場がなかったからか、ホロッホー、と思わずハトに向かって大声で叫びかけていた。
横に誰も人がいなくてよかったが、ハトはなぜかひどく驚いた様子で、独特で間抜けな羽音をより大きくたてて、わたしのベランダから飛び去っていった。

 

2007.01.21 Sunday

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