薫の下流日記

日記、近況、習作、その他ゴミ置き場

習作

東京強歩(2) いちども行かずにおわる大島という町が戦争をしかけてくる

とりあえず、まずとなりの町はどうなっているのか、わたしは自分で確かめてみることにした。家にあるポケット地図を見ると、わたしの住む町、江東区亀戸のとなりは大島となっている。しかし、亀戸のとなりは大島だといわれても、現実感がない。わたしはじっ…

東京強歩(1) 東京はどこにある

とにかく東京を歩いてみようと思った。東京に出てきて一年以上経ち、毎日東京に居るはずだが、わたしは東京に住んでいるのだ、という実感がない。果たしてここは東京なのだろうか、と思うことがよくある。普段生活しているところは、東京の東の方の下町と呼…

おっぱいが見たい

クリスマスの夜。 小さな男の子が、おとうさんに肩車をされてはしゃぎまくっている。 笑いあうふたりの息が白い。こどもの笑い声っていい。 男の子もおとうさんも幸せ。 若い女性が身体に密着したセーターを着て、コートを羽織り、笑顔を浮かべてどこかへ急…

おっぱいと男(下)

男が部屋で寝ているあいだに、かちゃり、と扉を開け、おっぱいはそろそろと入ってきて、男の腕を取り、勝手に婚姻届に名前を書かせていたのでした。 おっぱいは婚姻届をたたんで谷間に戻しました。 そして早足で入り口に向かいました。 男があっけにとられて…

おっぱいと男(中)

男は帰りにもりそばを食べようと思いました。 しかし、しばらく道をまっすぐ進んでいると、少し先にある区役所の前に、ずぶ濡れのおっぱいが立っていました。 鳥肌を立てたおっぱいが、男がやってくるのを待ちかまえています。 おっぱいは待ちかまえているの…

おっぱいと男(上)

町のはずれに、ひとりの男が住んでいました。 友だちもおらず、恋人もいない。 男はひとりぼっちのさびしい男でした。 休みの日、男が買い物をしにひとりでショッピングセンターに行くと、そこにはたくさんの人たちがいました。 家族で来た人や夫婦で来た人…

童貞、東京に現る(10)

はじめから読む。 童貞、東京に現る - 薫の下流日記 サッシを開けて中に入ると、電気を点けてない部屋は暗く、電気を点けようかと思うと、ローテーブルの上に置いた携帯電話が振動し始めた。着信を知らせるように、暗い部屋の中で携帯のランプが緑に点滅して…

童貞、東京に現る(9)

きれいと言った割には、医者はすぐさま手を洗い出し、しかもかなり念入りに洗っている。医療用のゴム手袋をはめていたくせに、念入りに洗っている。 パンツとズボンを穿き直し、コンジローマではないんですか、と訊くと、医者は素早くタオルで手を拭き、机の…

童貞、東京に現る(8)

向かいに座っている、二十歳かそこらの女の子に、僕とセックスしてくれませんか、と突然手をさし出してみたいような気がした。その横に座っている中年の女性に、おばさん、お願いだから僕とセックスしてくれませんか、と言いたい気がした。もちろんどちらに…

童貞、東京に現る(7)

次の日、目が覚めると携帯の着信ランプが点滅していて、約束通りちゃんと見せに行くこと、ヒロ子。と打たれたメールが入っていた。 夕方には、彼女からちゃんと見せに行ったのか、確認の電話がかかってくることにもなっている。昨日電話の終わりしなに、僕は…

童貞、東京に現る(6)

夜、電話が鳴らない。僕から掛けようかとも思うのだが、なんだか掛けづらい。僕から掛けても、いつものように繋がらないかもしれない。家族に詮索されたくないからといい、普段彼女は外などから電話を掛けてくる。 夜中になって、彼女から電話があった。僕は…

童貞、東京に現る(5)

電話を買わされたことといい、今の電話といい。そもそも一度も会ったこともないというのに、勝手に僕の日記にコメントをつけ、そのうちたびたび僕のページに訪れるようになり、実際には会ったこともないのに(僕は東京になど言ったことがないのだからあたり…

童貞、東京に現る(4)

マイミクシの日記や参加しているコミュニティへの書き込みを読んで、自分のページに戻ってくると、新着メッセージが一件あります、と表示されていた。 マイミクシの一人、ヒロ子さんだった。ページのアドレスだけが貼り付けてあり、リンク先をたどると、雨ガ…

童貞、東京に現る(3)

じっくりとページを読むと、尖圭コンジローマは、なかなか完治しないところや治療法が、あのイボに、仲間なのかそっくりである。僕はイボ好きする男、およそイボ好みの男なのかもしれない。 ふくろのイボが、いつ頃出来たのか正確には分からない。三年ほど前…

童貞、東京に現る(2)

僕はパソコンを起動して、エイズについて検索をした。僕が調べたところによると、僕のようなケースでは、あの液の持ち主がたとえエイズであったとしても、僕がエイズになるのは万に一つぐらいの可能性だという。 少しは安心した。ただ、僕のような人間は、万…

童貞、東京に現る

なんで僕は病院に行き、検査などを受けなければならないのか。 自分のせいでそんな目にあうのなら、それはもう自業自得というもので、もうどうしようもないことだが、病院に行かなければならぬ理由を作ったのは僕ではない。 しかも僕が行かなければならなく…

『巨乳とパンティーレモン』 宇宙人オレんちに現る

こわい。土星が追いかけてくる。木星がこちらをじっと見つめている。 やつらは、きっとそのとてつもなく巨大な重力で、わたしをあらたな衛星にするつもりにちがいない。 や、やられる。 暗い夜道で、男の前を歩いている女が、突然走り出すように、わたしは逃…

習作

僕がいまここに文章を書いているのは、この冬に僕はおかしくなって、アパートの部屋にひきこもり、誰にも会わない生活をはじめたからで、いっそのことこれまでのすべてをどこかにあらいざらい書いておきたくなったからだった。正直僕には話す相手がいない。 …

おっぱいとわたし(7)

おっぱいがこちらに駆け寄って来た。 ドアを閉めなきゃいけない。 だが、こちらに駆け寄ってくるおっぱいの姿を見て、閉めることができなかった。 おっぱいはわたしの横をあっという間にすり抜けた。しゅにゅという感触が、脚に伝わった。 振り返ると、部屋…

おっぱいとわたし(6)

おっぱいを止める為、わたしは駆け出そうとした。 しかしそのとき、江東区役所の中へおっぱいは入っていった。 どうなるのだろう。受理されてしまうのだろうか。どうしていいかもわからなくなり、わたしはその場から駆け出して、逃げてしまった。 当てもなく…

おっぱいとわたし(5)

なぜ、わたしはおっぱいと人生を歩まねばならないのだろう。 いつからそうなっていたのだろう。おっぱいが勝手に決めたことだろうか。そういう運命なのだろうか。 入口前で、またおっぱいは立ち止まって、用紙を確認している。 婚姻届には、成人二名の証人が…

おっぱいとわたし(4)

目の前の、おっぱいの後姿を見つめていると、むらむらと腹が立ってきた。 後ろ姿はまるでおしりのようだ。 どうしてくれよう、と思ったら、わたしを無視して、おっぱいはとことこと歩き出した。勝手にしろ、こっちも無視して行くだけさ、と思ったが、区役所…

おっぱいとわたし(3)

鳥肌を立てたおっぱいが、黙って江東区役所の前にいる。 自分の姿が目に入る場所にいて、しかし視線を合わせないようにしているところがいかにもおっぱいらしい。あてつけがましい。 わたしもおっぱいの方は見ないで、黙って通り過ぎることにした。 目の前を…

おっぱいとわたし(2)

おっぱいを抱えていては電車に乗れない。 錦糸町駅を通り過ぎ、わたしはおっぱいと共に南へ進んだ。おっぱいと南進した。 わたしの腕の中で、おっぱいは歩くたびにふるふると揺れている。 おっぱいは安心しきった様子で、ちょっと眠っているかのようでもあっ…

おっぱいとわたし(1)

オリナスの二階、窓際の、休憩用に設けられたテーブルにわたしはついた。買い物客が行き交っていた。窓から、錦糸公園を眺めると、草野球をしている人達がいる。自分も、あのような休日を過ごしてみたくもある。しばらくその様子を眺め、前に向き直ると、向…